よくある質問
FAQ(よくある質問)
Q.配偶者居住権の評価方法は?
遺産分割で配偶者居住権の認定、評価額を決める裁判例も出てきました。
配偶者居住権の主張をした場合に、調停や審判でどのような相続分になるのか確認をしておきましょう。
山口家庭裁判所周南支部令和3年3月29日審判です。
事案の概要
被相続人が死亡し、その遺産をめぐる争いが発生しました。
申立人は、被相続人の養子であり、相手方は被相続人の妻(B,83歳)と実子(C)です。
相続において、申立人は金銭での相続を希望。
Bは被相続人と生前に同居していた不動産(本件不動産)に引き続き住むために「配偶者居住権」の取得を望みました。Cは、配偶者居住権が設定された建物の所有権を取得することに同意していました。
被相続人の相続財産には、土地、建物2棟、預金2口、現金が含まれていました。配偶者は建物への終身の配偶者居住権取得を希望し、実子は配偶者居住権設定後の建物取得を了承、養子は相続分の金銭取得を希望していました。
なお、もう1名の子がいましたが、自己の相続分を申立人に譲渡して本件手続から排除されています。そのため相続分は、相手方Bが2分の1、申立人が6分の2、相手方Cが6分の1となっています。
配偶者居住権の評価方法が問題
本件の主要な争点は、以下の2つでした。
1.排除前相手方の特別受益。こちらが認定されていますが、今回は省略します。
2. 配偶者居住権の設定
配偶者Bは、被相続人が所有していた建物に居住しており、今後もそこに住み続けるために配偶者居住権の取得を希望しました。
裁判所は、この希望を認めるべきかどうかについて、他の相続人に与える不利益とBの生活維持の必要性を考慮しました。その結果、裁判所はBの生活を維持するために配偶者居住権の取得が必要であると判断し、終身の間にわたり配偶者居住権を認めました。
また、配偶者居住権の価額は、簡易な方法で算定され、188万6241円と評価されました。この評価は、建物と土地の価額に基づき、法定耐用年数やライプニッツ係数を使用して計算されました。
裁判所の遺産分割方法
主文は次のようなものでした。
1 被相続人の遺産を次のとおり分割する。
(1)相手方Cは、別紙1遺産目録記載1の土地、同記載2及び3の建物を取得する。
(2)相手方Bは、別紙1遺産目録記載2及び3の建物につき、存続期間を相手方Bの終身の間とする配偶者居住権を取得する。
(3)相手方Bは、別紙1遺産目録記載4及び5の預金並びに同記載6の現金をいずれも取得する。
2(1)相手方Bは、申立人に対し、前項(2)及び(3)の遺産を取得した代償として、263万6737円を支払え。
(2)相手方Bは、相手方Cに対し、前項(2)及び(3)の遺産を取得した代償として、94万0738円を支払え。
3 相手方Cは、相手方Bに対し、別紙1遺産目録記載2及び3の建物につき、第1項(2)記載の配偶者居住権を設定する旨の登記手続をせよ。
4 手続費用は、各自の負担とする。
配偶者居住権の評価
当事者全員は、配偶者居住権の評価について、次のとおりの簡易な評価方法により、188万6241円とすることを合意。同合意を不当と認める特段の事情はないとしています。
(1)本件土地及び本件建物2の合計現在価額 356万4660円
(2)負担付本件各建物所有権の価額 法定耐用年数超過により0円
(3)負担付本件土地所有権の価額
【本件土地の現在価額】225万5940円×【83歳女性の簡易生命表上の平均余命10年を存続期間とするライプニッツ係数】0.744≒167万8419円(1円未満切捨て)
(4)配偶者居住権の価額
【上記(1)】356万4660円-(【上記(2)】0円+【上記(3)】167万8419円)=188万6241円
配偶者居住権の計算方法
今回の裁判所で使われている計算方法は、相続税の計算でも使われる手法です。不動産評価額から、配偶者居住権が設定された所有権の金額(負担付)を引いた金額が配偶者居住権の金額になります。配偶者居住権の金額を出したいのに、先にその負担分を引いた不動産評価額を出すというものです。
今回は、建物の法定耐用年数が超過しているため、建物価値が0円とされている事例です。
終身の配偶者居住権を設定するには、存続年数を平均余命で算出する方法が使われます。
83歳の女性だと、平均余命は10年とされます。年3%の法定利率で割り直すので、ライプニッツ係数が使われます。
これにより、負担付建物所有権の価値は0、つまり建物の現在価額がそのまま配偶者居住権の金額になります。土地に関しては、10年程度の負担があるということで、現在価値が約225万円のところ、負担分を除いた金額が約167万円となっています。
これらを引いた金額が配偶者居住権の金額と算出されているわけです。
【配偶者居住権の具体的評価方法まとめ】
1. 本件土地及び本件建物2の合計現在価額を算出
2. 負担付本件各建物所有権の価額は、法定耐用年数超過により0円と評価
3. 負担付本件土地所有権の価額は、83歳女性の平均余命をもとに算出
4. 配偶者居住権の価額は、上記1から2と3の合計額を控除して算定
相続分及び取得分の算定
今回の裁判例の主なポイントである配偶者居住権の評価については、上記のとおりですが、一応、相続分がどうなったのか最終計算をチェックしていきます。
遺産目録記載の各遺産の相続開始時の評価額合計は2047万1688円。
排除前相手方に1400万円の特別受益を認定。
みなし相続財産の評価額は3447万1688円。
当事者等の具体的相続分を算定。
(1)相手方B 1228万3012円
(計算式)
ア 具体的相続分
【みなし相続財産】3447万1688円×【法定相続分】2分の1=1723万5844円
イ 超過特別受益等負担後の相続分
1723万5844円-{825万4719円×1723万5844円÷(1723万5844円+574万5281円+574万5281円)}≒1228万3012円(1円未満切捨て)
(2)申立人及び相手方C 各409万4338円
(計算式)
ア 具体的相続分
【みなし相続財産】3447万1688円×【法定相続分】6分の1≒574万5281円(1円未満切捨て)
イ 超過特別受益等(後記(3))負担後の相続分
574万5281円{825万4719円×574万5281円÷(1723万5844円+574万5281円+574万5281円)}≒409万4338円(1円未満切り上げ)
(3)排除前相手方 0円
具体的取得分
そして、遺産目録記載の各遺産の分割時の評価額合計が1318万3682円であることから、当事者の具体的取得分は、以下のとおりとなる。
(1)相手方B 791万0208円
(計算式)
【分割時の遺産総額】1318万3682円×(【具体的相続分】1228万3012円÷【相続開始時の遺産総額】2047万1688円)≒791万0208円(1円未満切捨て)
(2)申立人及び相手方C 各263万6737円
(計算式)
【分割時の遺産総額】1318万3682円×(【具体的相続分】409万4338円÷【相続開始時の遺産総額】2047万1688円)≒263万6737円(1円未満切り上げ)
当事者の取得希望等の確認
相手方Bは、本件各建物につき存続期間を相手方Bの終身の間とする配偶者居住権を取得し、今後とも本件不動産に居住することを希望。相手方Cは、配偶者居住権が設定された本件各建物を取得することを了解。申立人は、本件不動産の取得を希望しておらず、相続分を金銭で取得することを希望。
配偶者居住権を認定
相手方Bは、被相続人の配偶者であり、相続開始の時に本件不動産に居住していたところ、本件各建物について配偶者居住権の取得を希望する旨を申し出ており、相手方Bは、配偶者居住権が設定された本件各建物の取得を了解している。
そうすると、相手方Bの受ける不利益の程度を考慮してもなお、配偶者である相手方Bの生活を維持するために特に必要があると認められる。
したがって、相手方Bに本件各建物につき存続期間を同人の終身の間とする配偶者居住権を取得させ、相手方Cに本件不動産の所有権を取得させるのが相当であると指摘。
また、相手方Bが本件預金を引き出し、その残金である本件現金を保管していることなどを勘案すると、本件預金及び本件現金について、相手方Bに取得させるのが相当と判断。
上記を前提にすると、相手方Bの取得分は1148万7683円(=【配偶者居住権】188万6241円+【本件預金】合計1442円+【本件現金】960万円)となり、その具体的取得分を357万7475円(=【取得分】1148万7683円-【具体的取得分】791万0208円)超過することになり、申立人に対し263万6737円、相手方Cに対し94万0738円{=【具体的取得分】263万6737円-【配偶者居住権控除後の本件不動産】(358万2240円-188万6241円)}の代償金を支払うことになるが、相手方Bは、本件現金を取得するので、代償金を支払う能力があると認められると結論づけています。
配偶者居住権評価のポイント
本件の審判は、「配偶者居住権」の成立要件や評価方法に関するものです。
令和2年4月1日に施行されたこの配偶者居住権は、まだ新しく、裁判例が少ないです。
評価方法などが、今後の参考事例とされるでしょう。
配偶者居住権は、相続開始時に配偶者が被相続人所有の建物に居住していることが条件となり、遺産分割や遺贈によってその権利が認められる場合があります。
今回のケースでは、共同相続人間で合意が成立していたことが大きなポイントです。また、裁判所は、配偶者の生活を守るために必要な場合には、所有者が反対しても配偶者居住権を設定することができるとされています。
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