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よくある質問

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FAQ(よくある質問)

 

Q.遺言書による推定相続人による廃除が認められる場合とは?

推定相続人の廃除は、相続人の権利もあり、簡単ではありません。

特に、遺言書での手続は主張が通らないことも多いです。

この判断が分かれた事例を見てみましょう。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

 

大阪高等裁判所令和元年8月21日決定です。

暴力を理由に、遺言書記載の廃除ができるか争われた事例です。

 

動画での解説はこちら。

 

事案の概要

被相続人は公正証書遺言をのこしました。

遺言執行者が選任されました。

遺言書には、長男を廃除する旨の記載がありました。

廃除手続には、生前におこなうものと、遺言に記載するものがあります。廃除が認められると、その人は、推定相続人から外れることになります。遺言に記載した場合には、遺言執行者が申し立てをすることになります。

そこで、被相続人の公正証書遺言に基づき、遺言執行者が、長男を推定相続人から廃除することを求める申立てをしました。

 

家庭裁判所の認定事実

廃除の理由は暴行。

家庭裁判所が認定した事実は次のようなものでした。

長男は、平成16年から、被相続人が経営する会社で働くようになりました。
長男は、平成19年5月頃、被相続人を殴打。
さらに、平成22年4月頃、被相続人を突き飛ばして転倒させました。

被相続人は、平成22年4月19日、病院を受診し、右第10肋骨及び左第8肋骨の骨折並びに外傷性の左気胸と診断され、同病院に入院。

長男は、平成22年7月15日、被相続人の顔面を殴打。

被相続人は、平成23年3月29日、本件遺言において、長男が、被相続人に対し、しばしば殴る蹴るの暴行を加えるなど虐待を繰り返し、また、重大な侮辱を加えたことを理由として、被相続人の推定相続人から廃除するとの意思表示をしたものです。

 

家庭裁判所の判断

推定相続人廃除の制度は、遺留分を有する推定相続人が被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えた場合、又は推定相続人にその他の著しい非行があった場合、それらが相続的共同関係を破壊する程度に重大であったときに、推定相続人の相続権を剥奪する制度であるとの確認。


制度趣旨に鑑みれば、法は、推定相続人の廃除が被相続人の恣意によってなされることを想定していないというべきであり、推定相続人の行った言動が、廃除事由である虐待、重大な侮辱又は著しい非行に当たるといえるためには、被相続人の意向や推定相続人による言動の外形だけではなく、そのような言動がされるに至った原因や背景等の事情を考慮した上で、当該推定相続人からその相続権を剥奪するのが社会通念上相当と認められることが必要と解すべきであるとしました。


本件においては、長男が被相続人に対して、三度暴行を加え、そのうち一度の暴行により、肋骨骨折等の傷害を負わせたことが認められる点を指摘。

もっとも、暴行を加えた理由に関して、長男は、平成19年5月の暴行については、被相続人がその妻に暴行を加えたのを咎めたためである、平成22年4月の暴行については、会社の業務に関連して被相続人と口論になり、被相続人が殴りかかってきたのに反撃したためである、同年7月の暴行については、近隣のビルのオーナーから相談を受けて手配した契約(空調設備の修繕に係る契約)を被相続人が無断で取り消したことに立腹したためであるなどと述べていると言及。


これに対し、申立人は、暴行の原因や背景については、長男供述中に事実に反する部分があるか否かも含めて、特段主張をしておらず、また、申立人が提出した資料によっても、供述の信用性を否定するだけの事実を認めるに足りないとしました。


そうすると、長男が被相続人に暴行を加えた原因や背景については、被相続人の言動が長男による暴行を誘発した可能性を否定できないというべきであり、暴行により生じた傷害の内容等を踏まえても、長男が被相続人に暴行を加えて傷害を負わせたこと自体を理由に、長男からその相続権を剥奪するのが社会通念上相当であると認めることはできないと結論づけました。

廃除を否定。

 

遺言執行者が反論しようにも、本人ではないし、なかなか難しいところかと思います。

遺言による廃除が生前による廃除よりも難しいと言われる所以です。

これに対して、遺言執行者が即時抗告。

 

高等裁判所の判断

原審判を取り消し。
長男を被相続人の推定相続人から廃除するとの結論。

 

長男は、平成23年2月2日、法律事務所の弁護士に宛ててファクシミリにより送信した書面において、平成22年4月16日頃の暴行に関し、被相続人が「オマエが体調を壊すと会社の支障になる。だから妻の世話などするな。」と言ったことに激怒し、被相続人を殴り倒した旨記載しているのであって、被相続人が殴りかかってきたため反撃した旨の陳述は信用することができないと指摘。

また、そのほかの暴行の理由についても、上記そごの点に、上記陳述書の記載内容にいずれも客観的な裏付けを欠くことなどを併せ考慮すれば、直ちには信用することができないとしました。

 

高齢者への暴力は廃除理由に


のみならず、仮に、平成22年4月16日頃を除く各暴行について長男が陳述するような理由があり、被相続人の言動に長男が立腹するような事情があったとしても、それに対し、当時60歳を優に超えていた被相続人に暴力を振るうことをもって対応することが許されないことはいうまでもないところであって、このように、長男が被相続人に対し、少なくとも3回にわたって暴行に及んだことは着過し得ないことと言わなければならないと指摘。

しかも、被相続人は、平成22年7月の暴行により鼻から出血するという傷害を負い、同年4月16日頃の暴行に至っては、その結果、被相続人において、全治約3週間を要する両側肋骨骨折、左外傷性気胸の傷害を負って、同月19日から同月23日まで入院治療を受けたのであり、その結果も極めて重大であるとしました。

これらによれば、長男の被相続人に対する上記各暴行は、社会通念上、厳しい非難に値するものと言うべきであるとしました。

一連の暴行は、民法892条所定の「虐待」または「著しい非行」に当たり、社会通念上、長男から相続権を剥奪することとなったとしても、やむを得ないものと言うべきであると結論づけ、廃除を肯定。

 

長男の陳述した暴行理由は認定できないし、理由があっても高齢者への暴力はダメでしょ、という認定です。

 

推定相続人の廃除の認容率

遺言による廃除は、虐待の状況も見えにくいことから、認容率は高くないです。

司法統計上、廃除の申立ては年間200件程度に対し、認容件数は50件程度とされていた時期もあります。

あまり期待できない制度というのが実態です。

家庭裁判所が指摘したように、遺言執行者は反論しようにも、本人が亡くなっているため、主張・立証に苦しむのです。

暴行が犯罪行為であることからすれば、高裁のように広く認めた方が社会的には良いでしょう。

 

 

 

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