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FAQ(よくある質問)

 

Q.合資会社社員の相続債務計算は?

合資会社の無限責任社員の債務が、遺留分計算の際に問題になった事例です。

被相続人が、社員だったという場合には、チェックしておくべき内容です。

合資会社を退社した無限責任社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超える場合、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該社員は会社に対してその超過額を支払わなければならないとし、遺留分計算でも、これが債務として控除されるべきとした判例です。

最高裁判所令和元年12月24日判決です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

 

事案の概要

被相続人は、父親A。

Aは、その所有する一切の財産を長男である被告に相続をさせる旨の公正証書遺言をしました。

長女が原告。

原告は、遺留分を侵害されたとして、遺留分減殺請求権を行使。

不動産については、持分移転登記手続をもとめ、解約済みの預貯金、現金、不動産の一部から発生した賃料については、遺留分割合に従い不当利得の返還請求をしたものです。相続法改正前の事案です。

Aは、合資会社の無限責任社員でした。

Aは、成年後見開始決定を受けて会社から法定退社。これにより、本件会社に対し金員支払債務を負うかどうかが争われました。

遺留分算定に際し、債務の有無が争点となった事案です。

 

遺留分と債務

遺留分について定めた民法1029条1項は、遺留分の算定方法について「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する。」としています。

債務があれば、それを控除して遺留分の計算をすることになります。

そこで、被相続人であるAが債務を負っていたかどうかが問題になります。

債務を負っていたのであれば、相続財産の額からこれを控除する必要があります。

 

高等裁判所の判断

高裁で言い渡された原判決では、債務の控除を否定しています。

被告の主張を排斥した結論です。

被告の主張としては、Aは、会社の無限責任社員であった、会社が債務超過である以上、その債務について会社に対して支払義務を負うというものとしています。

合資会社については、持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合は、社員は、持分会社の債務を弁済する責任を負います(会社法580条1項1号)。

しかし、この場合、社員が弁済する責任を負う相手方は、会社債権者であり、会社に対してではありません。

また、退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内で弁済する責任を負いますが(同法612条1項)、この責任は、退社の登記後2年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後2 年を経過した時に消滅するとされています。

 

本件では、Aの退社時である平成23年11月を含む会計年度の期末において債務超過であり、会社の債権者に対しては、会社債務を弁済する責任を負うものの、退社の登記は平成24年2月27日にされています。

その2年後までに、会社債権者が、会社や被相続人に対して、会社債務の弁済を求める請求又は請求の予告をしたことを認めるに足りる証拠はありません。

そのため、債務があったとしても、消滅したものと認められるとしています。

そのため、相続債務は、遺留分侵害額の算定に当たっては、考慮しないこととするのが相当と結論づけています。

 

最高裁の判断

一部、原判決破棄、差し戻し。

 
まず、原審の内容について、合資会社が債務超過の状態にある場合であっても、無限責任社員は、退社により当該会社に対して金員支払債務を負うことはないと判断して、Aの本件会社に対する金員支払債務を考慮することなく被上告人の遺留分の侵害額を算定し、被上告人の請求を一部認容するとともに、上告人の相殺の抗弁を認めるなどしてその余の請求を棄却したと確認。

しかしながら、原審の上記判断は是認することができないとしています。

無限責任社員が合資会社を退社した場合には、退社の時における当該会社の財産の状況に従って当該社員と当該会社との間の計算がされ(会社法611条2項)、その結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を下回るときには、当該社員は、その持分の払戻しを受けることができるとしています。

一方、上記計算がされた結果、当該社員が負担すべき損失の額が当該社員の出資の価額を超えるときには、定款に別段の定めがあるなどの特段の事情のない限り、当該社員は、当該会社に対してその超過額を支払わなければならないと解するのが相当であるとしています。

このように解することが、合資会社の設立及び存続のために無限責任社員の存在が必要とされていること、各社員の出資の価額に応じた割合等により損益を各社員に分配するものとされていること(同法622条)などの合資会社の制度の仕組みに沿い、合資会社の社員間の公平にもかなうというべきであると、趣旨から解釈しています。


無限責任社員であるAが本件会社を退社した当時、本件会社は債務超過の状態にあったというのであるから、退社時における計算がされた結果、Aが負担すべき損失の額がAの出資の価額を超える場合には、上記特段の事情のない限り、Aは、本件会社に対してその超過額の支払債務を負うことになるとしています。

 

原審の理論では、債務があることになり、遺留分の計算も必要、そのため、差し戻しという結論をとっています。

 

 

 

合資会社と債務

合資会社の社員が負担する債務について、相手方は会社の債権者だとしても、この責任に係る追加の出資は、本質的には、会社に対する債務です。

退社時には、この点を精算する必要があり、これが債務と認定されたものです。

その後、債権者からの請求などの直接的な責任がなかったとしても、会社に対する債務は想定されるため、遺留分計算においては、これを控除すべきということになります。

 

被相続人が合資会社の社員だったという場合には、相続債務の計算、遺留分の計算では、この点を忘れてはいけないことになります。ご注意ください。

 

 

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