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よくある質問

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FAQ(よくある質問)

 

Q.相続後の認知があった場合の価額請求とは?

相続後認知と価額計算についての話です。

相続が発生した後に認知がされたケースで、価額請求の金額が争われた最高裁の判決。

最高裁判決令和元年8月27日です。

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2021.7.28

 

最高裁判決令和元年8月27日

まず問題になったのは民法910条。

相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。


こういう条文ですね。

認知は戸籍上の親子関係を発生させる制度です。

結婚している夫婦間の子であれば、そのまま親子として戸籍に載る扱いになります。

しかし、婚姻外で他の女性との間で子供をつくった場合、父親は子の戸籍に載りません。

親子関係が戸籍上はわかりません。これを発生させるのが認知です。

 

動画での解説はこちら。

死後認知とは?

認知は、生きてる間に届け出をすることでできます。

相続が発生後に、隠し子が見つかったというようなケースでは、戸籍を調べていて、認知の記載に気づいたということが多いです。

この場合は、被相続人が生前に認知をこっそりしていたということです。

 

この認知は生前ではなく、親の亡くなった後にもできます。

亡くなった後に子供側から、認知の訴えを起こして、親子関係を認めてもらい、戸籍にも反映させる手続です。

この認知の訴えは、死後であっても3年間はできます。

 

価額の請求とは

民法910条は、死後認知がされた場合の対応が書かれている条文です。

認知というのは、過去にさかのぼって効力を発生します。

相続の遺産分割がまだされていなかった場合には、認知が認められた子は、法定相続人として遺産分割協議に加わります。

ただ、このようにさかのぼって効力を発生するものは第三者の権利を侵害しやすいです。

遺産分割してしまったものを無効化するのは、やり過ぎだろうと考えられます。

たとえば、誰かに相続財産を譲渡したような場合、それを無効化すると第三者の権利を侵害してしまいます。

そのため、このような場合には、相続人間で金銭面で解決しようというのが910条の趣旨です。

 

 

事案の概要

今回のケースでは、父親死亡、母と長男との間で遺産分割協議を成立させ、相続手続きを済ませました。

「複数の遺産分割協議書が作成され、被相続人(平成20年2月3日死亡 本籍地○○○○)の相続人である配偶者、長男は、 同人の遺産について分割協議を行った結果、遺産のうち次の建物及び借地権をそれぞれ2分の1共有で取得することに決定した。」というような協議書を作成しています。

 

戸籍上、法定相続人は2人だけだった遺産分割は有効に成立しています。

その後、認知されていなかった子が認知の訴えを起こし、これが認められました。

ここで、相続人は、妻、長男の他に、子が新たに加わることになります。

 

すでに相続が済んでいたため、認知請求が認められた子は、民法910条で価額の支払い請求をしました。

今回、問題になったのは、この価額請求を認める際に消極財産を差し引くのかどうかという点です。

消極財産は、マイナスのもの、借金などの債務です。

 

認知された子は、長男を被告として価額請求の訴えを提起しました。

 

消極財産が争点

今回の消極財産をどうするかという争点を単純化してみます。


プラスの相続財産が1億円ありました。積極財産と呼びます。

消極財産の債務が1000万円ありました。

認知された子が、自分の相続財産として4分の1の価額請求をしてきます。

1億円の4分の1は2500万円。

しかし、相続財産全体でプラスマイナスを考えると、1億円ー1000万円の9000万円です。

そのため、請求を受けた長男としては、9000万円の4分の1である2250万円を払えばよいのではないかと主張したのです。

 

消極財産の計算については、過去にも争われていましたが、はっきりした最高裁の判断はなかったので、今回の判決が注目されています。

 

 

最高裁の結論

上告棄却。

消極財産は差し引かないという判断でした。

まず、910条の趣旨を確認。

法910条の規定は、相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには、 当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認める
ことによって、他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものである、としています。

 

この趣旨から、遺産分割協議の対象となるのは積極財産であり、消極財産は含まれないことを指摘。

 

そうすると、 同条に基づき支払われるべき価額は、当該分割等の対象とされた遺産の価額を基礎として算定するのが、
当事者間の衡平の観点から相当である。そして、遺産の分割は、遺産のうち積極財産のみを対象とするものであって、消極財産である相続債務は、認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され、遺産の分割の対象とならないものである、としています。

 

消極財産の債務を他の共同相続人が支払った場合でも、控除した計算は認められないと結論付けています。

相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既に当該遺産の分割をしていたときは、民法910条に基づき支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は、当該分割の対象とされた積極財産の価額であると解するのが相当である。このことは、相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や、他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合であっても、異なるものではない。

これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない、として上告棄却しています。

 

 

控除した場合の不利益

今回の結論は、債務は控除しないというものでした。

これがもし控除を認めていると、具体的事件でおかしなことになるケースもあると指摘されていました。

認知時に、他の共同相続人間で遺産の「一部」だけ分割協議が成立していたようなケースです。

このような場合、まだ遺産分割が成立していない遺産については、認知された子も遺産分割に参加します。

控除の考え方を進めると、相続債務中、分割協議が成立下遺産の一部に相当する部分については、認知された子は承継しないで、 価額の算定で考慮される、未分割の部分に相当する部分については、認知された子も他の共同相続人と一緒に承継することになりそうです。

しかし、これだと遺産全体の価額を評価して割合を計算しないといけなくなり、とても不便です。

算定が困難な事件も出てくるでしょう。

債権者としても困ります。

 

消極財産・借金の処理は?

相続時の債務については、法律上、当然分割されます。

各相続人が、その相続分に応じて、承継します。

そのため、原則として、遺産分割協議の際も対象から外します。


最高裁判決でも、このような遺産分割の性質から、価額算定の際にも、積極財産のみを基礎とするとしたわけです。

価額請求時に、既に相続債務が弁済されているようなケースでは、認知された子は、共同相続人に不当利得返還義務を負うとも考えられます。

そこで、支払請求を受けた場合、相続債務を弁済しているようなケースでは、相殺することも考えられるでしょう。

 

 

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